業界関係者向け記事

サービス部門はLTVを最大化する部門である

~お客様からカーライフを託される店舗を目指して~

「サービス工場は利益を稼ぐ部門」

「営業は車を販売する部門」

多くのディーラーでは、このような役割分担が当たり前になっています。

もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。

しかし、その考え方だけでは、サービス部門が持つ本来の価値を十分に活かし切れていないかもしれません。

サービス部門は、車検や点検、故障修理を行う部門ではありません。

お客様との関係を維持し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化し、次の商談や代替、自動車保険、ご紹介など、**Next Opportunityへのナーチャリングを担う「顧客育成部門」**です。

人口減少や保有期間の長期化、さらにはオンライン販売の普及が進むこれからの時代、ディーラー経営に求められるのは、新規顧客を獲得する力だけではありません。

一度ご縁をいただいたお客様と、どれだけ長くお付き合いを続けられるか。

その中心にあるのが、サービス部門なのです。


第1章 あなたの店舗では、サービス部門を「整備部門」と考えていませんか?

サービス部門は、故障を直すことや車検・点検を行うことが仕事だと思われがちです。

しかし、本当にそれだけでしょうか。

営業スタッフが新車を販売し、お客様へ納車した瞬間から、お客様との長いカーライフが始まります。

その間、お客様と最も多く接点を持つのは営業スタッフではなく、サービス部門です。

点検、車検、オイル交換、タイヤ交換、自動車保険の更新、季節ごとのメンテナンス。

これら一つひとつの接点が、お客様との信頼関係を深める機会になります。

つまり、サービス部門の役割は整備をすることではなく、お客様との関係を維持し、LTVを最大化することです。

そして、その積み重ねが、次回代替や紹介、自動車保険の継続など、さまざまなNext Opportunityにつながっていきます。

だからこそ、サービス部門は「整備部門」ではなく、お客様との関係を育み続ける「顧客育成部門」として位置付ける必要があります。


第2章 「ディーラーは高いから勝てない」と、最初から諦めていませんか?

輸入車ディーラーでは、お客様が購入した店舗へ自然と入庫するケースが多く見られます。

一方、国産車ディーラーでは、量販店、ガソリンスタンド、市中整備工場など、多くの選択肢があります。

そのため、車検や点検は「顧客との接点を失うタイミング」にもなり得ます。

現場では、

「ディーラーは高いから。」

「価格では勝てない。」

という声を耳にすることがあります。

しかし、本当にそうでしょうか。

交換部品や予防整備の範囲、保証内容、完成検査体制などを同じ条件で比較すると、価格差は想像ほど大きくないケースも少なくありません。

一方で、検査に通るための最低限の整備で費用を抑えるサービスと比較すれば、価格差が生じるのは当然です。

また、市中整備工場にもさまざまな特徴があります。

お客様の経済的負担を抑えることを重視する工場もあれば、高度な設備や技術力を備え、品質や安心を提供する工場もあります。

どちらにも明確な役割があり、それぞれの強みで地域のカーライフを支えています。

だからこそ、ディーラーが競争すべき相手は「価格」ではありません。

ディーラーの強みは、営業、サービス、自動車保険、CRM、イベント、SNSなどを組み合わせ、お客様との接点を継続的に設計できる組織力にあります。

納車から始まり、点検、オイル交換、自動車保険の更新、シーズンチェック、車検、そして代替提案へと続く一連のタッチポイントを設計できることこそが、ディーラーならではの価値なのです。


第3章 車検と点検だけで、お客様との関係を維持できると思っていませんか?

法定点検は年に一度。

車検は二年に一度。

これだけでは、お客様との関係を維持するには十分とは言えません。

重要なのは、車検以外にも来店したくなる理由を増やすことです。

例えば、

・メンテナンスパッケージ

・オイルボトルキープ

・シーズンチェック

・コーティングメンテナンス

・洗車サービス

・タイヤ保管サービス

・バッテリー診断

・エアコン点検

などは、継続的な来店機会をつくる代表例です。

さらに、自動車保険の契約や更新も重要なタッチポイントです。

また、整備以外にも、SNSでの情報発信、地域イベント、季節イベント、キッズスペースなど、お客様が「また来たい」と思える店舗づくりも、LTVを高める重要な施策になります。

来店機会は自然に生まれるものではありません。

店舗が意図的に設計するものです。


第4章 サービス来店したお客様に対して、必ず営業スタッフも接客に加わっていますか?

サービス来店は、営業スタッフにとって最も価値の高いタッチポイントの一つです。

それにもかかわらず、サービス受付だけで対応が終わり、営業担当がお客様と顔を合わせることなくお帰りになる店舗も少なくありません。

これは非常にもったいないことです。

営業スタッフの役割は、この場で商談を始めることではありません。

ましてや、新型車の説明や買い替え提案をすることでもありません。

お客様が営業を警戒していない状態だからこそ、自然なコミュニケーションが生まれます。

そして、この時間で最も大切なのは、営業スタッフが話すことではなく、お客様に語っていただくことです。

例えば、

「最近、お車の調子はいかがですか。」

「最近はどちらへお出掛けになることが多いですか。」

「お車の使い方で何か変わったことはありませんか。」

「ご家族の皆さまもお変わりありませんか。」

そんな何気ない会話から、お客様は現在のカーライフや、ご家族の変化、趣味、ライフスタイルの変化を自然に話してくださいます。

営業スタッフは、その話を丁寧に聴き、お客様を理解することに集中します。

この場では、情報を提供することよりも、お客様から情報をいただくことの方がはるかに価値があります。

お客様ご自身の言葉で語られた内容こそが、次の代替、自動車保険、アクセサリー、メンテナンス商品、ご紹介など、さまざまなNext Opportunityにつながるヒントになるからです。

そして、その内容をCRMへ記録し、サービス部門とも共有することで、店舗全体で一人のお客様を継続的にサポートできるようになります。

サービス来店は、「売る場」ではありません。

**「お客様に語っていただき、関係を育てる場」**です。

だからこそ、営業スタッフもサービス接客に加わり、お客様との信頼関係を深めることが重要なのです。

店長の役割は、営業スタッフに「もっと電話しなさい」「もっと訪問しなさい」と指導することだけではありません。

サービス来店という貴重な顧客接点に営業スタッフが自然に加わり、お客様に語っていただく時間を店舗の仕組みとしてつくることも、これからの店舗マネジメントには欠かせません。


第5章 10年後もお客様が店舗へ来店する理由を、今から設計していますか?

これからオンライン販売はさらに広がっていくでしょう。

新車を購入するだけなら、店舗へ行かなくても済む時代になるかもしれません。

しかし、お客様との信頼関係はオンラインだけでは築けません。

カーライフを支え、安心を提供し、困ったときに頼っていただける存在になる。

それこそが、リアル店舗の価値です。

そして、その中心を担うのがサービス部門です。

オンライン販売が進む時代だからこそ、リアル店舗でしか提供できない体験やコミュニケーションの価値は、これまで以上に高まっていくでしょう。


第6章 まとめ

サービス部門は、車検や点検を行うためだけの部門ではありません。

お客様との関係を維持し、LTVを最大化し、Next Opportunityへのナーチャリングを担う「顧客育成部門」です。

市中整備工場や量販店には、それぞれ異なる強みと役割があります。

だからこそ、価格だけで競争するのではなく、ディーラーならではの強みである「顧客との接点を設計できる組織力」を磨くことが重要です。

そして店長の仕事は、営業部門とサービス部門を別々に管理することではありません。

一人のお客様を、店舗全体で支える仕組みをつくることです。

サービス来店は、整備のためだけの時間ではありません。

営業スタッフも接客に加わり、お客様との対話を通じて信頼関係を育むための貴重な時間です。

LTVは、販売によって生まれるものではありません。

営業部門とサービス部門が連携し、お客様との対話を積み重ねることで信頼が育まれます。

そして、その信頼が、「この店になら、車に関することを安心して任せられる」という気持ちにつながり、車両販売、点検・整備、自動車保険、代替、そしてご紹介まで、お客様のカーライフ全体を託していただける関係へと発展していきます。

これからのディーラー経営が目指すべきものは、一台を販売することではなく、お客様からカーライフ全体のライフタイムバリューを託していただける店舗になることではないでしょうか。

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